2023年、女子オートレーサー史上初「GI制覇」

快挙を成し遂げた佐藤摩弥。女子オートレーサーの先駆者として、最前線を走り続け、年々進化を遂げる姿に迫る。

プロフィール/佐藤摩弥(川口31期)
生年月日:1992年5月16日/出身地:埼玉県/血液型:B型/
選手登録:2011年7月8日/所有車:Pタン3,キツネダンス,アオタン,ムラカミサマ/重賞:GⅡ川口記念(2016年)・GⅡ若獅子杯争奪戦(2020年)・GIキューポラ杯(2023年)

女子史上初・GIを制す
― GI制覇とは、佐藤さんにとってどんな位置づけでしたか?
SG優勝戦に乗れて、皆SG制覇を期待しますが、その前にGIを勝ててないですから。段階を踏む一つです(笑)。同じ整備グループの黒川(京介)君や、同期の丸山(智史)君もGIを勝っていて、先を越されて悔しい思いもありました。
― キューポラ杯でGIを制しましたが、自信を持って臨めたのですか?
はい!この時は開催を迎える前からエンジンが良かったです。地元で2節連続優勝できて、そのあと1節遠征挟んでキューポラ杯だったのですが、滅多にLINEでやりとりしない師匠の吉田幸司さんからも『優出はノルマだね』と開催前に連絡頂きました。それだけ期待できる状態だったのでしょうね。
― 優勝を意識しての緊張は?
いや、基本的には普段から出来る事をやって、負けたら仕方ないと考えています。ただ今回はチャンスだし、取りたいな、とは準決勝が終わって思いましたが特に緊張はしなかったです。無事先頭でゴール出来て、嬉しいというよりホッとしました。
― 周囲はどんな声をかけてくれましたか?
優勝した後、1カ月くらいは会う人皆におめでとう!と。『あー、皆の印象に残る出来事だったんだな』と。普段、疎遠になっていた人からも結構連絡頂いて。『女子史上初』って大きく新聞にも載せてもらいました。自分で2部買って、実家のお母さんに持って行ったら、お母さんも買ってくれていました(笑)。今でも大事に取ってあると思います。お父さんは会社で自慢してるんじゃないかと(笑)。いい親孝行が出来たかなと。今、レーサーでいられるのは幼少時代にモトクロスをさせてくれた両親のおかげですから。感謝しています。
女子レーサーのパイオニアとして想う事
― 今や女子では無双ですね。
いや、年々女子のレベルが上がっています。私の状態が悪いわけではないのに、相手がそれ以上で負けてしまったり。『スピード』を備えている選手が増えていますから刺激になります。
― 競輪やボートのように女子だけの開催に憧れは?
現状の人数からすると現実的ではないですが、いつか女子の開催が2つ、3つあって、その先に女子のグレードレースがあったりすれば一層、レベルが上がるし、モチベーションにもなるかな? とは考えますね。そこで自分が結果を残して、皆に刺激になればとも。そういった意味では、年末のスーパースターガールズ王座決定戦は、女子選手のモチベーションには繋がっていると思いますね。
― 昨年から減量もされたそうで、ファンの間でも話題になっていました。
去年の夏から冬までで8キロ減らしました。総体重の20%減。パーソナルジムに通い筋トレと食事管理です。今でも週1回はジムに通ってキープしています。食事管理も勉強したので、タンパク質は積極的に摂取して、カロリー計算しながら食事しています。随分と小食になりました。
― 減量のきっかけは?
もっと速く走る為。今の成績はこの減量の効果だと。あとはファッションを楽しみたい(笑)。トレーナーさんには『女性と男性では10歳くらい体力の年齢が違う』と言われていて、70歳を超える篠崎(実)さん、(鈴木)章夫さんまでは無理だけど60歳くらいまで頑張れたらいいなと。『あのおばあさん、まだ走ってるんだ』って思ってもらえるように身体を管理したい。
― 選手生活12年を振り返っていかがですか?
いい事だけではないですが、大きな怪我もなく充実した選手生活を送れています。仕事(整備)をする環境も師匠の吉田(幸司)さんをはじめ、若井(友和)さんの指導のおかげでここまで来られたと思っています。
― 特に印象に残るアドバイスといったら?
新人の頃から若井さんには『今日、明日ではなく5年後、10年後の為の練習をしなさい』と言われてきました。師匠の吉田さんも自由にマシン整備をさせてくださったり。今の私があるのはお2人のおかげです。
夢を現実に
― 4月のSGオールスター・オートレースでは優勝戦2着の自己最高成績も収めましたね。
実は前検日前日に福岡のルイ・ヴィトンのショップに入って、1時間ずーっと悩んだ結果、欲しかった50万円のバッグを買ってしまったんです。それでオールスターに臨んで、ちょっと予選道中は今イチで『このままじゃ赤字になる!』と自分を追い込んだら、結果準優勝。自己最高の賞金を得られました(笑)。
― BIGレースの前は大きな買い物をして臨みましょう(笑)
それ、皆に言われます。車の新車が納車された瞬間に地元で連続優勝もありました。たまたまですけど(笑)。
― 次なるハードル「SG制覇」の声が耳に入ると思いますが、その姿を想像した事はありますか?
実は、ちょっと想像したりしています。妄想するのは大好きなので(笑)。GI優勝戦に乗れたときにどんなコメント言おうかとか想像するだけで楽しい。SGで優勝したら、『いつも泣かないけど、泣きそうだなぁ』とか。ただ、まだSGを勝てる実力は足りてない。可能性は0%ではないですが、もっとスピードが欲しい。あとは、勢いですね。チャンスがあるとすれば、いろんなものがかみ合って、その時に『自分がチャンスをものにできる状態』を作っておく事ですね。
― 10月から適用のランクは自己最高のS級6位。GI制覇とキャリアハイで迎える2023年SGスーパースター王座決定戦は2年ぶりの出場です。最後に想いを聞かせてください。
最初に出場したSS王座決定戦(2019年)は前検日に急に不安になった事を覚えています。メンバーは凄いですけど、不安な気持ちでレースに臨むのと、〝戦ってやる〞という強い気持ちで臨むのとでは違うので、自信を持って臨めるように準備だけはしていきます。決定戦に勝ち上がるのはノルマで、大晦日に『佐藤摩弥の走りを見たい』とお客様に思ってもらえるように、精一杯頑張ります!!オッズパーク会員の皆様、応援よろしくお願いします。
― ありがとうございました。

 佐藤摩弥選手は、女子オートレーサーの中で、人気実力共No.1の存在で、オートレース業界を牽引している存在でもある。通称サトマヤと呼ばれ、業界の宝でもある。
 今年は、GI制覇&年末の大一番SSポイントの獲得で、SS王座決定戦もほぼ出場内定。一時期本来のスタートが切れず、苦しい期間もありましたが、そこからダイエットに成功。本来のスタートが戻り、最近は好調をキープしている。
 ハンデ戦の時の気迫ある捌きも魅力だが、サトマヤ選手の勝ちパターンは、やはり持ち前の速攻決めての、抑え逃げだ。試走タイムが出る方ではないので、同ハン選手より試走タイム0.03位の劣勢であっても、充分戦える。以前は、スタート出ても後半伸びが出ず、アドバンテージを守りきれないシーンも有ったが、今年は、周回が増えても心配無用。しっかりと最後までタイムが落ちず、走り切っている。
 近代オートで一番重要なポイントとまで言われているスタート、そのスタートが何しろ速い。トップレーサーの中でも5 本の指に入る、スタート巧者だ。男子レーサーに負けない闘争心、その熱い走りに魅了される。それに加え、テクニック・体幹・精神力も身に付き、可愛くてカッコ良くて強い!そんな魅力一杯の選手だ。
 サトマヤ選手は、試走タイムより展開重視。タイヤの失敗さえ無ければ、短ハンデ戦になるグレードレース、特にGIやSGは買いです!スタート決めて頭に立てば、トップレーサーにとっても、抜きづらい存在のレーサー。年末の大一番まで、狙ってください。絶対に損はないですよ!

中林 久美子

伊勢崎オートレース場のCS放送実況中継アナウンサーとして活動。2021年3月にアナウンサーを卒 業し、現在はオートレースの魅力を伝えるためYouTube配信などを中心に活躍。